年末調整と確定申告は両方やる?必要なケース・セルフチェック法・源泉徴収票の転記手順を解説
最終更新日:2026年11月2日
この記事でわかること
- ✔ 年末調整を終えた後に確定申告を行うことは可能であり、税務上も正しく処理される
- ✔ 医療費控除・初年度住宅ローン控除・副業・提出漏れがある場合は両方行う必要がある
- ✔ 現金で戻るのは所得税の還付金のみで、住民税は翌年の徴収額から減額される
「会社で年末調整の書類を提出したけれど、医療費控除やふるさと納税のために確定申告も両方やっていいの?」と疑問に思う会社員の方は多くいらっしゃいます。
結論から申し上げますと、年末調整と確定申告の両方を行うことは税法上まったく問題ありません。確定申告書を提出すると、会社で行った年末調整のデータが確定申告の内容で「上書き・統合」されるため、二重課税になる心配もありません。
本記事では、自分が確定申告を行うべきか判断できるセルフチェック指標、源泉徴収票から確定申告書へ転記する具体的手順、所得税還付と住民税軽減の正しい計算の考え方をわかりやすく解説します。
年末調整と確定申告は両方やっていい?基本ルールと仕組み
会社で年末調整を済ませた後に、医療費控除や副業などの理由で自分でも確定申告を行ってよいのか疑問に思う方は非常に多くいらっしゃいます。結論から申し上げますと、年末調整と確定申告の両方を行うことは税務上まったく問題なく、むしろ両方必要なケースが多く存在します。
税務署に確定申告書を提出すると、年末調整で精算された給与所得のデータに、確定申告で追加した所得や控除が自動的に統合されます。最終的な税額が正しく上書き再計算される仕組みになっているため、二重に課税されたり損をしたりすることはありません。
年末調整は勤務先が給与所得のみを対象に概算で税金を精算する手続きであり、確定申告は個人がすべての所得と控除を国税庁に最終申告する手続きです。両方の役割を正しく理解することで、控除の漏れを防ぎ税金の払いすぎを防ぐことができます。
年末調整と確定申告の仕組みと比較
| 比較項目 | 年末調整 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 手続きを行う対象 | 勤務先から受ける給与所得のみ | すべての所得(給与・副業・不動産等)と全控除 |
| 手続き先 | 勤務先(会社) | 所轄の税務署(またはe-Tax) |
| 処理できない主な控除 | 医療費控除、初年度の住宅ローン控除、雑損控除など | なし(すべての所得控除・税額控除に対応) |
| 最終的な税額の扱い | 給与のみの概算税額を精算 | 確定申告の内容で最終税額を上書き・決定 |
- 年末調整後に確定申告を行っても二重課税や二重徴収になることはありません
- 確定申告書を提出すると、税務署側で年末調整の給与データに新しい内容が上書き・合算されます
- 年末調整で提出し忘れた保険料控除なども、確定申告を行えば後からすべて反映できます
年末調整と確定申告を両方やるべきか調べる「セルフチェック指標」
年末調整を終えた方が「自分は確定申告を両方やるべきか、行うと得になるのか」を判断するためのセルフチェック指標を整理しました。申告義務があるケースと、申告すると税金が戻る還付申告のケースがあります。
確定申告を行うべきかどうかを見極める判断基準は次のとおりです。ご自身の状況に該当する項目があるか確認してください。
確定申告が必要・得になるセルフチェック早見表
| チェック項目・該当事由 | 申告の要否・区分 | 得になる税金・影響 |
|---|---|---|
| 年間医療費が10万円(または総所得の5%)超 | 任意(還付申告) | 所得税が還付され、翌年の住民税が安くなる |
| 住宅ローンを購入・入居した最初の年(1年目) | 必須(控除受ける場合) | 所得税の還付(引ききれない分は住民税軽減) |
| ワンストップ特例未利用のふるさと納税(6自治体以上含む) | 任意(還付申告) | 寄附金控除により所得税還付・住民税軽減 |
| 生命保険料やiDeCo等の証明書を年末調整で出し忘れた | 任意(還付申告) | 出し忘れた控除分だけ所得税還付・住民税軽減 |
| 副業の年間所得(収入-経費)が20万円を超えている | 必須(法的義務) | 副業分の所得税・住民税の納付が必要 |
1. 医療費や寄附金などの控除対象があるかチェック
1年間で支払った医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の場合はその5%)を超えている場合、医療費控除を申請すると所得税の還付と翌年の住民税軽減を受けられます。また、ワンストップ特例を利用していないふるさと納税の寄附金がある場合も確定申告が必要です。
住宅を購入して1年目の住宅ローン控除を適用したい場合も、年末調整では手続きできないため確定申告を行うことで大きな節税効果が得られます。
- 家族全員分の医療費を合算して10万円を超えていれば医療費控除の対象
- ふるさと納税の寄附先が6自治体以上ある場合やワンストップ申請を逃した場合は確定申告が必要
- 災害や盗難で資産に損害を受けた場合は雑損控除の申請で税金が安くなる
2. 控除証明書の提出漏れや家族状況の変化をチェック
年末調整の提出期限までに生命保険料や地震保険料、iDeCoの払込証明書を出し忘れた場合、確定申告を行うことで控除を追加できます。
年末調整後に結婚や出産、あるいは家族を扶養に入れたなどの変更があった場合も、確定申告を行うことで扶養控除などを正しく反映させることができます。
- iDeCo(小規模企業共済等掛金払込証明書)の提出漏れは確定申告で簡単に挽回可能
- 年の途中で独立した子どもや親を扶養に追加する場合も確定申告で手続き可能
3. 副業やその他の所得の有無をチェック
会社員で副業による所得(収入から必要経費を差し引いた金額)が年間20万円を超える場合は、法律上確定申告を行う義務が発生します。
副業所得が20万円以下であっても、医療費控除などで確定申告を行う場合は、20万円以下の副業所得もあわせてすべて申告する必要がある点に注意してください。
- 副業所得(原稿料、デザイン作成、メルカリ転売、Uber Eatsなど)の合計金額を事前に計算
- 株の譲渡益や不動産所得、一時所得(競馬の払い戻しや保険の満期金等)も確認
源泉徴収票から確定申告書への転記方法と作成手順
年末調整後に確定申告を行う際は、勤務先から交付される「給与所得の源泉徴収票」を元に国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で入力を行います。どこに何の数字を入力すればよいかを事前に把握しておくと手続きがスムーズです。
確定申告書を作成する際の手順と源泉徴収票の転記の流れは次のとおりです。
源泉徴収票から確定申告書作成コーナーへの転記箇所対応表
| 源泉徴収票の記載項目 | 確定申告書作成コーナーの入力画面項目 | 転記・入力時の注意点 |
|---|---|---|
| 支払金額 | 給与の支払金額 | 額面年収の金額。一番大きく記載されている枠の数字を入力 |
| 所得控除の額の合計額 | 所得控除の額の合計額 | 年末調整で適用された控除の合計。そのまま入力する |
| 源泉徴収税額 | 源泉徴収税額 | 年末調整で精算された後の所得税額。0円の場合もそのまま入力 |
| 社会保険料等の金額 | 社会保険料等控除額 | 会社で天引きされた社会保険料の合計金額を入力 |
- ステップ1:12月〜1月頃に勤務先から年末調整済みの「給与所得の源泉徴収票」を入手する
- ステップ2:国税庁「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、給与所得の入力画面を開く
- ステップ3:源泉徴収票に記載されている「支払金額」「所得控除の額の合計額」「源泉徴収税額」等を転記する
- ステップ4:医療費控除や初年度住宅ローン控除など、追加したい控除の金額を入力する
- ステップ5:e-Taxで送信するか、印刷して税務署へ郵送・持参して提出する
源泉徴収票から数値を転記する際の3つの重要ポイント
1つ目のポイントは、必ず年末調整が完了した「確定版の源泉徴収票」を使用することです。12月から1月頃に会社から受け取る書類に記載された数値をそのまま転記します。
2つ目のポイントは、源泉徴収票に記載されている「所得控除の額の合計額」や「社会保険料等の金額」をそのまま入力することです。年末調整で適用済みの控除を重ねて個別入力すると二重計上になるため注意してください。
3つ目のポイントは、追加したい控除(医療費控除や初年度住宅ローン控除など)のみを別枠で入力・加算することです。国税庁の作成コーナーでは画面の案内に沿って追加控除額を入力すると、自動で還付額が計算されます。
確定申告で戻る税金(還付額)の計算方法と住民税の注意点
確定申告を行うと「いくら税金が戻ってくるのか」についての計算の考え方を説明します。ここで非常に重要なのは、戻ってくるお金の種類によって還付のされ方が異なる点です。
確定申告で反映される税金軽減の効果は、次の2つのルートで還元されます。
還元される税金の種類と受取方法の違い
| 税金の種類 | 還元される形式 | 還元の時期・方法 |
|---|---|---|
| 所得税の還付金 | 指定口座への現金振り込み | 確定申告から約1〜1.5ヶ月後に指定口座へ振込 |
| 住民税の減額 | 翌年の住民税額からの差し引き(控除) | 翌年6月〜翌々年5月の毎月の給与天引き額が軽減される |
- 所得税の還付:指定した銀行口座へ現金で振り込まれる(申告から約1〜1.5ヶ月後)
- 住民税の軽減:現金で振り込まれるのではなく、翌年6月以降の住民税(給与天引き等)が安くなる
【数値例】年収400万円・医療費15万円の場合の計算シミュレーション
年収400万円(適用される所得税率5%と仮定)の会社員が、1年間で15万円の医療費を支払った場合(保険金等の補填なし)の具体的な節税効果の計算例です。
年末調整後に確定申告を行う際の注意点とトラブル防止策
年末調整と確定申告を両方行う場合には、いくつか落とし穴が存在します。申告内容の不備によって意図しない税負担が発生することを防ぐため、事前に注意点を確認しておきましょう。
主な注意点と対策は次のとおりです。
1. ワンストップ特例制度はすべて無効化される
ふるさと納税でワンストップ特例の申請書を各自治体に提出していても、確定申告を行った時点でワンストップ特例はすべて無効になります。
医療費控除などのために確定申告を行う際は、ワンストップ特例を提出した分も含めて、1年間のすべてのふるさと納税(寄附金控除)を確定申告書に記入しなければなりません。
2. 共働き夫婦における扶養控除の二重計上に注意
夫婦で同じ子どもや親を重複して扶養控除の対象として申告することは税法上禁止されています。
年末調整または確定申告のいずれかで夫婦のどちらが扶養控除を受けるかを事前に相談し、正しく申告欄を記入してください。
3. 副業所得が20万円以下でも住民税の申告が必要
給与所得者の副業所得が年間20万円以下の場合は所得税の確定申告義務が免除されますが、住民税には20万円の免除制度がありません。
所得税の確定申告を行わない場合であっても、お住まいの市区町村役場へ住民税の申告を行う必要があるため注意が必要です。
4. 副業が会社に知られないための住民税徴収方法の選択
副業所得がある状態で確定申告を行う際、住民税の徴収方法を「特別徴収(給料から天引き)」にすると会社に副業分の住民税額が通知されます。
会社に知られたくない場合は、申告書の住民税に関する事項で「自分で納付(普通徴収)」を選択してください。
よくある質問
Q. 年末調整で提出済みの「社会保険料控除証明書」は、確定申告で再度提出が必要ですか?
A. 再提出は不要です。会社で年末調整された社会保険料の金額は、源泉徴収票の「社会保険料等の金額」欄に合算されて記載されています。確定申告書には源泉徴収票の数字をそのまま転記するため、提出済みの証明書を改めて添付する必要はありません。
Q. 医療費控除で確定申告をしたら、住民税の還付金も指定口座に振り込まれますか?
A. いいえ、住民税の還付金は口座には振り込まれません。確定申告で計算された住民税の軽減分は、翌年6月から翌々年5月までに支払う毎月の住民税から差し引かれる(減額される)形で還元されます。現金振込となるのは「所得税の還付金」のみです。
Q. 確定申告を行うと、会社で行った年末調整が無効になってしまいますか?
A. 無効になるのではなく、年末調整の結果に確定申告で追加した内容が合算されて「上書き」されます。会社での手続きが無駄になるわけではなく、年末調整済みの源泉徴収票をベースにして最終精算が行われるため安心してください。
まとめ
- ▶年末調整と確定申告を両方行うことは可能であり、税務署のシステムで上書き統合されるため二重課税にはなりません。
- ▶確定申告を行う際は源泉徴収票の「支払金額」「所得控除の額の合計額」「源泉徴収税額」を正確に転記し、追加したい控除のみを個別入力します。
- ▶節税効果のうち現金で口座に還付されるのは「所得税」のみであり、「住民税」は翌年6月からの住民税額から差し引かれて軽減されます。