マンション経営で節税できる仕組みとは?減価償却費の計算手順と損益通算の基礎解説
最終更新日:2026年8月13日
この記事でわかること
- ✔ マンション経営で所得税・住民税や相続税が節税できる根本的な仕組みと条件
- ✔ 建物価格の案分方法と減価償却費をご自身で算出するための具体的な計算手順
- ✔ 損益通算による税負担軽減の計算ルールと診断ツールを活用した手軽な試算方法
マンション経営による節税対策は、高所得の会社員や資産家の方から非常に高い関心を集めています。「不動産を購入すると払った税金が戻ってくる」と聞いて検討を始める方も少なくありません。
しかし、不動産投資による節税は無条件に税金が安くなるわけではなく、「減価償却費」の計上と「損益通算」という税制上の明確なルールに基づいています。仕組みや計算手順を正しく理解しないまま購入すると、将来的な税負担の増加や資金繰りの悪化を招くリスクもあります。
本記事では、マンション経営で節税ができる仕組みや減価償却費の計算手順、損益通算による税金軽減のメカニズムをわかりやすく解説します。なお、本記事では仕組みや計算手順の解説を行い、ご自身の属性に合わせた具体的な自動計算は当サイトの無料診断ツールで行うことができます。
マンション経営で節税ができる2つの仕組み
マンション経営によって得られる節税効果には、大きく分けて「所得税・住民税の節税」と「相続税の節税」の2つの軸が存在します。節税の仕組みを正しく把握するためには、税金の種類ごとにどのような効果が生じるかを整理することが重要です。
不動産投資による節税は、単に税金が免除されるわけではありません。会計上の経費を計上して課税所得を減らす仕組みや、資産の評価方法の違いを利用する仕組みに基づいています。
仕組みの全体像は次のとおりです。
1. 所得税・住民税が節税できる仕組み(損益通算と減価償却費)
所得税や住民税の節税は、帳簿上の赤字を本業の給与所得などと合算する「損益通算」によって実現します。不動産事業で発生した赤字額を給与所得から差し引くことで、課税対象となる総所得金額を直接減らすことができます。
ここで重要となるのが「減価償却費」の存在です。減価償却費は実際の現金支出を伴わない帳簿上の経費であるため、手元のキャッシュを残しながら会計上の赤字を作り出すことが可能になります。
不動産所得の計算と損益通算の構造
| 項目 | 現金支出の有無 | 損益計算上の扱い |
|---|---|---|
| 家賃収入 | 収入あり | 益金(プラス) |
| 管理費・固定資産税等 | 支出あり | 損金(マイナス) |
| 減価償却費 | 支出なし(帳簿上のみ) | 損金(マイナス) |
| 損益通算後の課税所得 | − | 給与所得から不動産赤字分を控除 |
2. 相続税が節税できる仕組み(評価額の圧縮効果)
相続税の計算において、現金や預貯金は額面通りの100%で評価されます。これに対し、不動産は路線価や固定資産税評価額を基準に計算されるため、時価よりも低い金額で評価される特性があります。
さらに賃貸用として第三者に貸し出している物件の場合、借家権割合や貸家建付地の評価減が適用されます。その結果、実質的な資産価値を維持したまま、相続税の課税ベースを大きく圧縮できます。
評価額の圧縮に関する主な特例と要件は次のとおりです。
- 建物は固定資産税評価額(一般的に建築費の50〜70%程度)で評価される
- 賃貸用住宅は貸家建付地評価となり、土地・建物の評価額がさらに約30%〜40%減額される
- 小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)が適用できれば、一定面積まで土地の評価額が200平方メートルを上限に50%減額される
減価償却費の計算手順と建物価格の算出手順
マンション経営における最大の経費項目である「減価償却費」を正しく計算するためには、まず物件購入価格から建物価格を正確に切り出す必要があります。土地は年月が経っても価値が減少しないため、減価償却の対象になりません。
売買契約書に建物と土地の内訳が明記されていない場合は、固定資産税評価額の比率を用いて案分計算(あんぶんけいさん)を行います。具体的な算出ステップと計算式について順番に確認していきましょう。
1. 建物価格と土地価格の案分手順(固定資産税評価額の比率)
物件全体の購入価格から建物価格を算出する際は、自治体から送付される「固定資産税評価証明書」に記載された評価額の比率を使用します。
建物価格を算出する計算式は次のとおりです。
購入額3,000万円(税抜)のマンションにおける案分計算例
| 項目 | 固定資産税評価額 | 評価額の比率 | 実際の購入価格への案分額 |
|---|---|---|---|
| 建物部分 | 1,000万円 | 40% | 1,200万円(減価償却の対象) |
| 土地部分 | 1,500万円 | 60% | 1,800万円(減価償却の対象外) |
| 合計 | 2,500万円 | 100% | 3,000万円 |
2. 減価償却費の計算式と構造別の法定耐用年数
建物価格が確定したら、構造ごとに決められた「法定耐用年数」に応じた償却率を掛けて毎年の減価償却費を算出します。個人事業主の不動産所得では原則として「定額法」が適用されます。
年間減価償却費を算出する計算式は次のとおりです。
建物の構造別・法定耐用年数と定額法償却率の一覧
| 建物の構造 | 法定耐用年数 | 定額法償却率 |
|---|---|---|
| RC・SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造 | 47年 | 0.022 |
| 重量鉄骨造(骨組肉厚4mm超) | 34年 | 0.030 |
| 軽量鉄骨造(骨組肉厚3mm超4mm以下) | 27年 | 0.037 |
| 木造住宅 | 22年 | 0.046 |
損益通算による所得税・住民税の減額メカニズムと計算例
不動産所得が赤字になった場合、給与所得からその赤字額を控除(損益通算)することで所得税および住民税が軽減されます。ただし、節税額の計算は単純な「赤字額 × 税率」ではありません。
日本の所得税は所得が高くなるほど税率が上がる「超過累進税率」が採用されています。そのため、損益通算によって課税所得が減ると適用される税率区分そのものが下がり、予想以上の減額効果が生まれるケースがあります。
また、東日本大震災の復興財源として課される「復興特別所得税」は、課税所得ではなく「算出された所得税額(基準所得税額)」に対して2.1%を乗じる仕組みです。所得税額が下がれば復興特別所得税も自動的に減少します。
1. 超過累進税率と復興特別所得税の正確な計算ルール
所得税率は課税所得金額に応じて5%から45%までの7段階に分かれています。これに加えて住民税率(原則一律10%)および復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が課税されます。
損益通算を行うと、課税所得の最上位の税率区分から順番に所得が圧縮されます。適用税率が下がるラインをまたいで損益通算が行われると、税率の低下と控除額の変動により高い節税効果を得ることができます。
所得税の超過累進税率の段階(速算表より抜粋)
| 課税される所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円 から 329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
| 330万円 から 694万9,000円まで | 20% | 42万7,000円 |
| 695万円 から 899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
| 900万円 から 1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
2. 【数値例】給与の課税所得700万円・不動産赤字100万円の場合の計算手順
具体的な数値例として、給与の課税所得が700万円(適用税率23%)の方が、不動産事業で100万円の赤字を計上し、課税所得が600万円(適用税率20%)に減少した場合の手順を見てみましょう。
損益通算前の所得税額は「700万円 × 23% − 63.6万円 = 97.4万円」、復興特別所得税は「97.4万円 × 2.1% = 2万4,454円」となります。損益通算後の所得税額は「600万円 × 20% − 42.7万円 = 77.3万円」、復興特別所得税は「77.3万円 × 2.1% = 1万6,233円」です。
このように、損益通算によって適用税率が23%から20%へと下がる効果も含め、所得税・復興特別所得税で約20.8万円、住民税(100万円×10%=10万円)と合わせて年間約30.8万円の税金が軽減されます。
損益通算による税額変動の具体例
| 試算項目 | 損益通算前 | 損益通算後(赤字100万円) | 差額(軽減額) |
|---|---|---|---|
| 課税所得金額 | 700万円 | 600万円 | −100万円 |
| 適用所得税率 | 23% | 20% | 3%低下 |
| 基準所得税額 | 97万4,000円 | 77万3,000円 | −20万1,000円 |
| 復興特別所得税(所得税額×2.1%) | 2万4,454円 | 1万6,233円 | −8,221円 |
| 住民税額(一律10%) | 70万円 | 60万円 | −10万円 |
| 合計税額(年額) | 169万8,454円 | 138万9,233円 | 約30.9万円の軽減 |
不動産投資で計上できる主な経費と失敗しないための注意点
マンション経営で正しく損益通算を行うためには、認められている経費を漏れなく計上することが不可欠です。経費項目を適切に集計することで、合法的に不動産所得の金額をコントロールできます。
しかし、節税ばかりを追求して事業としての収益性を無視すると、将来的に資金繰りが行き詰まる危険性があります。ここでは計上できる経費の一覧と、陥りがちな注意点を解説します。
1. 不動産経営で計上できる主な必要経費の一覧
不動産収入を得るために直接必要となった費用は、必要経費として計上可能です。税務上認められる代表的な経費項目は次のとおりです。
- 減価償却費(建物および付属設備の価値低下分)
- 借入金利息(不動産ローン利息のうち建物相当分)
- 固定資産税・都市計画税・印紙税などの公課
- 管理費・修繕積立金・賃貸管理会社への委託手数料
- 火災保険料・地震保険料(当年経過分)
- 仲介手数料・司法書士報酬・不動産取得税(購入初年度)
- 物件確認や管理のための交通費・通信費(事業使用割合分)
2. 注意すべき2つのリスク「デッドクロス」と「土地負債利息の不通算」
不動産投資で節税を狙う際に必ず知っておくべきリスクが「デッドクロス」と「土地負債利息の不通算」です。
デッドクロスとは、ローンの元本返済額が減価償却費を上回る状態のことです。現金が出ていっているのに会計上は黒字となり、手元資金がないのに税金が発生する事態に陥ります。
また、損益通算には法律上の制限ルールが設けられています。代表的な注意点は次のとおりです。
他の節税手法との比較と確定申告の具体的な手順
節税や資産形成を検討する際、マンション経営以外の選択肢と比較検討することが大切です。制度ごとに特徴やリスクが大きく異なるため、自身の目的に合った手段を選ぶ必要があります。
また、マンション経営で節税効果(税金の還付)を得るには、毎年の確定申告を正しく行う手続きが不可欠です。ここでは他手法との比較と確定申告の具体的な手順を解説します。
1. 他の節税・資産形成手法との違いと特徴比較
代表的な節税および資産運用手法であるNISAや航空機リース、海外移住との違いを整理しました。
各制度の特徴や適用条件の比較は次のとおりです。
主な節税・資産形成手法の比較一覧
| 手法・制度 | 主な節税の仕組み | 特徴とメリット | 注意点・リスク |
|---|---|---|---|
| マンション経営 | 損益通算・減価償却・相続税評価圧縮 | ローンを活用したレバレッジが可能 | 空室リスク・修繕費・デッドクロスリスク |
| NISA | 運用益(譲渡益・配当)の非課税化 | 少額から始められ流動性が高い | 給与所得等の損益通算は不可 |
| 航空機リース | 特別減価償却による損金算入 | 短期間で大きな繰延効果が得られる | 一口あたりの投資額が大きく法人向き |
| 海外移住(低税率国) | 非居住者化による税率低減 | キャピタルゲイン非課税等の低税率 | 生活拠点の移転・ビザ要件・出国税リスク |
2. マンション経営の節税(税金還付)を受ける確定申告手順
給与所得者であっても、不動産所得の損益通算による税金還付を受けるには、ご自身で確定申告手続きを行う必要があります。
確定申告を進めるための基本的な手順は次のとおりです。
- 1. 収入と経費に関する必要書類(売買契約書・各種領収書・ローン返済明細など)の準備
- 2. 不動産所得の収支内訳書または青色申告決算書の作成
- 3. 確定申告書に給与所得と不動産所得の赤字を入力し、損益通算を適用
- 4. 翌年2月16日から3月15日までに所轄税務署へ申告書を提出(e-Taxの利用が可能)
よくある質問
Q. マンション経営を始めれば、必ず給与所得の税金が戻ってきますか?
A. 必ず還付されるわけではありません。不動産所得が黒字である場合や、土地ローンの利息など損益通算対象外の経費が多い場合は税金が安くなりません。ご自身の収入や物件条件に応じた正確な計算が必要です。
Q. 初年度だけ節税効果が高く、2年目以降は小さくなると聞きましたが本当ですか?
A. はい、本当です。購入初年度は登録免許税や不動産取得税、仲介手数料などの初期費用が一度に経費化できるため節税額が大きくなります。2年目以降は毎年の減価償却費や経常経費のみとなるため、赤字幅は小さくなります。
Q. 年末調整でマンション経営の節税手続きはできますか?
A. 年末調整では手続きできません。会社員の方であっても、不動産所得の申告や損益通算による税金の還付を受けるためには、ご自身で確定申告(原則として翌年2月16日〜3月15日)を行う必要があります。
まとめ
- ▶マンション経営による節税は、減価償却費の計上による「損益通算」と「相続税評価額の圧縮」が主な仕組みです。
- ▶建物価格の案分計算と「建物価格 × 償却率」の計算式を正しく把握することで、年間の減価償却費を自ら試算できます。
- ▶復興特別所得税は所得税額の2.1%であり、損益通算により税率区分が下がる効果も含めて正確な節税額を把握することが重要です。個別数値の試算は無料診断ツールをご活用ください。